公共交通全国・1kmメッシュ

高齢化地域におけるバス事業者集中リスクの調査

65歳以上が住む全国の1kmメッシュのうち、半径800m以内のバス停の事業者名が1種類しかない単一事業者メッシュに、高齢者の何割が住むか。全国で集計し、半径・停留所の範囲・年齢の定義を変えた感度分析で結論の頑健性を確かめた。

問いと取り組んだこと

2020年に65歳以上の人が住む全国の1kmメッシュのうち、メッシュ中心から半径800m以内のバス停に記録された事業者名が1種類しかないメッシュは、どれほどあるでしょうか。以下、このメッシュを単一事業者メッシュと呼びます。バス停の記録は国土数値情報P11の2022年度版です。

ある地域のバスを1社だけが運行しているなら、その事業者が路線を縮小・撤退したときの影響は大きくなります。自治体が交通供給の継続性を追加で確認する地域を選ぶ材料として、この事業者集中を集計しました。

全国の単一事業者メッシュに住む65歳以上人口を集計し、自治体別の地図にしました。そのうえで、次の3つを調べています。

  • 感度分析: 半径、集計に含める停留所の範囲、年齢区分の定義を変えると、結果はどれだけ変わるか
  • 事業者の種別: 単一事業者メッシュの事業者は、コミュニティバスに限られるか
  • 自治体の順位付け: 割合と人数のどちらを指標にするかで、上位に来る自治体はどう違うか

指標の定義

主な指標は、単一事業者メッシュに住む65歳以上人口の割合 (人口加重割合) です。分母は、65歳以上人口が判明し、半径内に停留所が1つ以上あるメッシュの65歳以上人口です。半径内に停留所が無いメッシュは分母から除き、集中とは別に集計しました。

わかったこと

#要点数字
1全国の高齢者のおよそ半分が、単一事業者メッシュに住む半径800m以内に停留所があるメッシュの65歳以上は32,397,947人。そのうち単一事業者メッシュに住む人は14,892,764人 (46.0%)、67,361メッシュ
2割合の水準は半径の定義に依存するが、人数の規模は保たれる半径500mで58.5%、800mで46.0%、1,000mで40.4%。どの半径でも1,300万人を超える
3割合で順位付けると地方、人数で順位付けると大都市が上位に来る分母が1万人以上で割合100%の自治体は29 (最大はいわき市の89,781人)。人数の上位は大阪市356,785人、名古屋市339,898人
4単一事業者メッシュの事業者は、コミュニティバスに限られない民間の路線バスのみが11,031,786人、コミュニティバスのみが2,807,601人、公営バスのみが993,371人
5半径内に停留所の無い地域は、集中とは別に集計する半径800m以内に停留所の無いメッシュの65歳以上は2,906,321人。分母には含めていない

ただし、これはバス停の記録にある事業者名という文字列の集中です。路線撤退のリスクや運行本数を表すものではありません。

自治体ごとの割合

自治体別の、単一事業者メッシュに住む65歳以上人口の割合

図の出典: 国土交通省「国土数値情報 P11(2022年度)」、総務省統計局「2020年国勢調査メッシュ」、行政界の加工結果。データの版と利用条件。

自治体ごとに、単一事業者メッシュに住む65歳以上人口の割合を塗り分けました。階級は20ポイント刻みの固定区分です。低い階級から順に232、271、328、220、615自治体で、値の無い自治体は75です。最も高い80%以上の階級が615自治体と、最も多くなりました。

割合で順位付けると、地方の小規模な自治体が上位に来ます。人数で順位付けると、上位は大都市が占めます。

順位自治体単一事業者メッシュの65歳以上人口
1大阪市356,785
2名古屋市339,898
3福岡市251,874
4横浜市224,577
5北九州市200,995

全自治体の値はmunicipalities.csvにあります。

読み手ごとに知っておきたいこと

読み手結論検討する材料
自治体の交通担当自分の自治体の割合と人数を両方見る。割合が100%でも人数の少ない自治体と、割合は中程度でも人数の多い大都市がある候補の自治体の現行の時刻表、共同運行、デマンド交通
国と都道府県の交通担当全国の高齢者の約半分が、記録上は単一事業者メッシュに住む。半径の定義によって割合は18ポイント変わる半径内に停留所の無い2,906,321人と、単一事業者メッシュの人を分けて扱う

定義と感度分析

メッシュ ii の65歳以上人口を aia_i、半径 rr 以内の停留所に記録された異なる事業者名の数を ki(r)k_i(r) とし、対象集合 EE について人口加重割合を求めました。

pr=∑i∈EaiI{ki(r)=1}∑i∈EaiI{ki(r)≥1}.p_r = \frac{\sum_{i \in E} a_i I\{k_i(r)=1\}}{\sum_{i \in E} a_i I\{k_i(r)\geq 1\}}.

65歳以上の内訳が秘匿された30,660メッシュは対象集合から除き、0人とは扱っていません。都道府県境で分割された人口の行は、メッシュコードで合算しました。

半径内の停留所は、メッシュ中心から各停留所までの大円距離で判定しました。operator の文字列の異なり数を数え、0種類、1種類、2種類以上に分類しています。共同運行を表す文字列は分割していません。メッシュはその中心点で自治体に割り当て、政令市の区は市に集約しました。複数の自治体の面に入る15件はコード順に、どの面にも入らない4,840件は最近傍の面に割り当てています。自治体別の合計は全国の合計と一致しました。

定義を変えたときの結果は次のとおりです。

項目主分析代替の定義
半径800mで46.0% (14,892,764人)500mで58.5% (17,284,277人)、1,000mで40.4% (13,345,015人)。人数の上位20自治体は、800mと500mで16、800mと1,000mで17が共通
集計に含める停留所半径内の全停留所メッシュ内の停留所だけなら53.9% (16,602,283人)
年齢区分65歳以上75歳以上で45.9%。人数の上位20自治体は19が共通
自治体の順位付けの指標割合と人数の両方割合だけでは小規模な自治体が、人数だけでは大都市が上位に来る

46.0%という値は、半径800mという定義に依存します。ただし、どの定義でも、1,300万人を超える高齢者が単一事業者メッシュに住むという規模は変わりません。

データ

  • バス停: 国土数値情報P11の2022年度版。278,515行、事業者名は1,445種類 (yuiseki/ksj-p11-bus-stop-jp 版 442223b)。
  • 人口: 2020年国勢調査の1kmメッシュ。yuiseki/estat-census-mesh-2020 版 6c486c8。177,861行を176,964メッシュに集約した。総人口126,146,099人との一致も確かめた。
  • 自治体: 面のある市区町村1,741 (yuiseki/jp-admin-2026-09 版 e6c87b1)。

限界

単一事業者メッシュであっても、運行本数、路線撤退のリスク、個人の移動の困難さは分かりません。P11には運行本数、時刻、徒歩経路の距離がありません。半径800mは直線距離で、徒歩の経路距離ではありません。事業者名の表記揺れや、メッシュ中心で代表させることの影響も残ります。人口は2020年、停留所は2022年度で、時点が異なります。

三大都市圏と地方圏の比較はしていません。政策に使う前には、候補の自治体の現行の時刻表、共同運行、デマンド交通の確認が要ります。

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